読売新聞2/4:発達障害「触れる癒し」

2024年2月4日読売新聞朝刊「ひと」に掲載された記事内容をあたらめてご紹介させていただきます。

〜発達障害  触れる癒し〜

発達に不安のある子どもたちが通う支援センターで働きながら、親がそうした子どもたちと触れ合って心身を癒やす「フィルセラピー」を考案。 2019年に発達障害の子どもを持つ母親を支援する法人を設立し、セラピストの養成に取り組んでいる。

07年、重度の知的障害がある長女を出産した。体重は1850グラム。生後9か月の定期健診で、医師に「発達に遅れがある」と告げられたが、「いつかは追いつくはず」と思っていた。

だが、周囲の子どもたちと、「できること」の差は開いていった。同年代の幼児が歩き回り、友達と遊び始めた頃、娘はうまく歩けずにすぐ転んでいた。「おはよう」と話すのも難しかった。焦りは募っていった。

娘は小学校入学時に、特別支援学級を勧められた。厳しい現実を突きつけられ、娘に隠れて涙した一方、「周りには一生追いつかない」ことを受け入れられたという。焦りは消え、娘の「ありのまま」の長所や個性に目が向くようになった。

同じ悩みを持つ親が集まれる場を作ろうと、13年に温かな手で赤ちゃんの肌に触れる「ベビーマッサージ」の教室を開いた。言葉をうまく話せない娘と心を通わせられる手段だったからだ。その後、障害者専門のセラピーを学び、資格を取得。16年には、身体心理学を専門とする桜美林大の山口創教授による「自閉症へのタッチセラピー」の効果に関する研究にも協力した。

そして、発達支援センターで働くうちに、子どもの特徴に合った触れあい方があることに気づき「フィルセラピー」を考案した。育児に不安を抱える親から相談を受けることも増え、19年に一般社団法人「発達障がい育児母親サポートネットワーク」を設立。オンラインで講座を開いている。

「フィルセラピー」は、普段は意思疎通が難しい子どもたちでも、障害の種類や程度によって触り方や部位を変え、母子が心身から安らげる触れ合い方を提案する。22年に商標登録した。「フィル」は英語で「満たす」という意味。発達障害や発達に不安のある子どもたちだけでなく、親たちにも我が子への愛情表現を通して心を満たしてほしいという願いを込めた。

1月、千葉市内で開いたセラピー教室。母親が子どもを膝の上に乗せ、服の上からおなかや背中をさすると、子どもたちは安心した表情を見せた。座っていられずに駆け回る子もいたが、母親には「子育てが大変な時期はいつか絶対に終わるから、今の苦労も楽しんで」と優しく声をかけていた。

自身の中で「障害」という概念はなくなりつつある。長女は高校生になり、バスに乗って一人で登校できるようになった。発達障害がある子も、ない子も、誰でも他人より得意なことがあれば、苦手なこともある。「障害も個性の一つでしかない」。今はそう思える。

子どもの障害や発達で悩む親たちに望むのは一つだ。
「『この子を産んでよかった』。いつか、そう思えるようになってほしい」

2024年2月4日読売新聞朝刊 記事:渡辺亮平

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